国が行っている対策
看護師の人手不足を打開するため、国はさまざまな対策を講じています。対策のポイントは、潜在看護師の復職を支援するためのプログラムの実施や、法改正による潜在看護師と医療現場とのつながりの強化です。
再就職支援プログラムで復職をバックアップ
看護師免許を持ってはいても、離職したまま復職していない潜在看護師は日本国内に多数います。そこで、潜在看護師の復職によって看護師の人手不足を解消することを目的に、再就職支援プログラムが全国各地で実施されています。
再就職支援プログラムは潜在看護師を対象に行われる講習会のことで、都道府県のナースセンターや看護協会で実施されています。潜在看護師の多くは離職してから多くの時間が経過しており、医療や看護に関する専門知識を忘れてしまっていることも少なくありません。そのため、再就職支援プログラムの講習会では、医療や看護の知識、最新の専門知識について学び直すためのサポートが行われます。ブランクがある潜在看護師は復職への強い不安を感じている場合が多いため、再就職支援プログラムがあることで再就職への意欲そのものを刺激することもできます。
再就職支援プログラムの一例として、東京都ナースプラザでは、指定病院で復職支援研修や就業相談を受けられる「手厚くしっかり体験コース」などの各種コースを用意しています。この体験コースには、講義を主とするプログラムで看護の魅力を再発見できる1日コースや、模型、医療機器を使用した演習や病棟実習を含む5日コースおよび7日コースなどが含まれています。その他、都内で独自に復職支援研修を実施する施設を紹介する「気軽にさくっと体験コース」などもあります。
法改正で潜在看護師とのつながりを強化
平成27年10月1日から、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が改正されました。この法改正により、潜在看護師が都道府県のナースセンターに届け出を行うことが義務となりました。都道府県のナースセンターが潜在看護師の存在や各自の状況を把握できるようになったことで、個人のニーズに合わせたきめ細やかな復職支援ができるようになりました。具体的な支援内容としては、潜在看護師に対する求人情報や復職支援についての情報提供、復職支援のための研修の案内、復職の意向の有無についての定期的な意思確認などがあります。
ナースセンターと潜在看護師が直接つながる仕組みができたことで、復職に意欲を持つ潜在看護師の再就職を強力にバックアップすることが可能になりました。そのような取り組みが看護師の人手不足の解消に大きく役立っており、離職する看護師の増加を食い止めています。
人手不足で疲弊している看護師へ
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なぜ人手不足になっているのか?
看護師が不足するとどうなるのか?
看護師の人手不足は、さまざまなところに重大な影響を及ぼします。人手不足の現場で働く看護師の業務負担は重く、ストレスや不安から離職を考える可能性が高まります。離職者が増えると残った看護師の負担がさらに重くなり、離職者をまた増やすことになりかねません。看護師の疲労が限界を超えてしまうなら、看護の質が落ちて患者さんにも不利益が発生します。看護師の確保が難しい地方の場合、人手不足が病院の閉鎖にまでつながることもあります。
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深刻さを増す人手不足を打開するには?
業務の効率化
看護師の人手不足を打開するためには、労働環境を根本から見直す必要があります。人手不足の医療現場における労働環境の改善に役立っているのがICTです。ICTを看護師の業務に取り入れると、電子カルテや電子薬歴の照会、遠隔診療、介護施設や薬局との連携、ナースコールなど幅広い業務を効率化できるようになります。実際にICTを導入している医療現場では、看護師の負担を減らしながら看護の質を高めることに成功しています。