看護師の仕事が過酷さを増している
看護師の人手不足はどの現場も深刻で、状況が改善される見込みが薄いままの状態が続いています。では、なぜ看護師の数が増えないのでしょうか。その原因について考えてみましょう。
看護師の過酷な労働環境がもたらす害
看護師の労働環境はどんどん過酷になっています。通常の業務に加え、カルテの情報収集などの業務をサービス残業でこなさなければならない看護師は少なくありません。看護師の労働環境が悪化すると、患者さんに悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。過酷な労働環境ゆえに過労死してしまうリスクも高まります。本来であれば、患者さんの世話を行うことが看護師の主な仕事です。しかし、現実には看護業務以外の事務的な業務や会議、看護研究や症例発表の準備など山のような業務を抱え、常にオーバーワークの状態となってしまうのです。
看護師が抱える業務の中には、患者さんのためではなく病院の利益、評判のために行われているものも少なくありません。病院のための業務も大切ですが、問題はそれを看護師が本来の業務を圧迫してまでこなさなければならないという点です。看護師の心身が疲弊すれば、重大な医療ミスが発生するかもしれません。本人が健康を損なえば、看護師の仕事を続けることがそもそもできなくなってしまうおそれもあります。
看護師の人手不足はかなり深刻
医療現場における働き方改革は急務となっています。しかし、現状最も焦点が当てられているのは医師の働き方で、看護師の働き方については実態把握のみで具体的な改善策があまり施されていません。日本医療労働組合連合会(医労連)が実施した2017年の看護師の労働実態調査によれば、看護師の人手不足は前年を上回り、年次有給休暇の取得率は下回っていました。
人手不足が続くことから看護師1人あたりの業務負担も増え、前年に比べて仕事量が増えたと感じている看護師は調査を受けた人全体の60%近くにまで達していました。「大幅に業務が増えた」と感じている看護師を年代別に分けて見ると、40代以上のベテラン層に負担が偏っている現状も見えてきました。年次有給休暇を完全消化できた人は5%程度とかなり低く、中にはまったく消化できなかった人もいました。年次有給休暇の取得率については、24歳までの若い看護師ほど低い傾向が見られました。
勤務中の休憩時間を規定どおりに取れている人は少なく、休憩をきちんと取れている人の割合が最も低い準夜勤については約44%の人が「まったく休憩を取れていない」もしくは「あまり取れていない」と回答しています。このような調査から、看護師の人手不足と過重労働が極めて深刻な状況であることがわかります。看護師が健康を保ちながら長く働くためには、労働環境を根本から変えていく必要があります。
人手不足で疲弊している看護師へ
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なぜ人手不足になっているのか?
看護師が不足するとどうなるのか?
看護師の人手不足は、さまざまなところに重大な影響を及ぼします。人手不足の現場で働く看護師の業務負担は重く、ストレスや不安から離職を考える可能性が高まります。離職者が増えると残った看護師の負担がさらに重くなり、離職者をまた増やすことになりかねません。看護師の疲労が限界を超えてしまうなら、看護の質が落ちて患者さんにも不利益が発生します。看護師の確保が難しい地方の場合、人手不足が病院の閉鎖にまでつながることもあります。
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深刻さを増す人手不足を打開するには?
業務の効率化
看護師の人手不足を打開するためには、労働環境を根本から見直す必要があります。人手不足の医療現場における労働環境の改善に役立っているのがICTです。ICTを看護師の業務に取り入れると、電子カルテや電子薬歴の照会、遠隔診療、介護施設や薬局との連携、ナースコールなど幅広い業務を効率化できるようになります。実際にICTを導入している医療現場では、看護師の負担を減らしながら看護の質を高めることに成功しています。